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シナモン香り成分に他者とのつながりを促進する効果を発見 – 高齢者の社会的フレイル予防へ応用期待

こころの健康

シナモン香り成分に他者とのつながりを促進する効果を発見

国立大学法人鹿児島大学水産学部とクラシエ株式会社漢方研究所は共同研究により、食品や生薬として広く利用されているシナモン(生薬名:ケイヒ)の香り成分に、社会性を高める作用があることを発見しました。この研究成果は、高齢者の社会的フレイル(社会とのつながりの低下)の予防や改善への応用が期待されています。

シナモン(生薬ケイヒ)

研究の背景と目的

高齢化社会の進展に伴い、身体機能や認知機能の低下に加え、人とのつながりや社会参加の減少によって生じる「社会的フレイル」が深刻な課題となっています。社会的フレイルは、孤立や引きこもりだけでなく、身体活動量の低下、食欲不振、うつ症状などを引き起こし、要介護状態や認知症のリスクを高めることが知られています。

このような背景から、社会性や社会参加を維持・促進するための新たな介入法の開発が求められていました。研究チームはこれまで、社会性を高める食品や漢方薬、生薬由来成分の探索を進めており、その過程で漢方製剤である人参養栄湯に社会性を改善する作用を見出したことから、その構成生薬の一つであるケイヒ(シナモン)に着目し、その社会性への影響と作用機序の解析を行いました。

シナモン成分が社会的接近行動を促進

研究では、社会性を評価する実験モデルとしてゼブラフィッシュが用いられました。ゼブラフィッシュにシナモン、またはその主要香気成分であるシンナムアルデヒドを投与した結果、なじみのない集団への社会的接近行動が有意に増加することが確認されました。この行動変化は攻撃性の増加によるものではなく、社会的な関心や社会性の高まりによるものであると判断されています。

研究成果概要

作用機序の解明

シンナムアルデヒドの作用機序を解析したところ、投与によって脳内のイソトシン量が増加することが明らかとなりました。イソトシンは魚類において社会行動や不安の制御に関与する神経ペプチドであり、哺乳類のオキシトシンに相当します。イソトシン受容体の作用を阻害すると、シンナムアルデヒドによる社会性向上効果は消失しました。

さらに、シンナムアルデヒドは肝臓におけるFGF21の発現を増加させることが判明しました。FGF21の作用を阻害した場合も同様に社会性向上効果は消失したことから、シンナムアルデヒドは肝臓でFGF21を増加させ、そのシグナルが脳内のイソトシン神経系を活性化することで社会的接近行動を促進すると示唆されています。

ゼブラフィッシュ

研究成果の意義と今後の展望

シナモンの香り成分に社会性を高める効果が見出された報告はこれまでになく、本研究は社会的フレイルの予防や改善につながる新たな可能性を示す成果です。シンナムアルデヒドは古くから漢方で用いられてきた生薬ケイヒに含まれる主要成分であり、本研究成果は伝統医薬の作用機序に科学的根拠を与える知見としても期待されます。

シナモンは食品や生薬として広く利用されており、その主要成分であるシンナムアルデヒドも食品の香りづけに用いられています。この研究成果は、高齢者の社会的フレイルの予防や改善への応用につながることが期待されています。

掲載論文情報

本研究成果は、2026年6月に国際学術誌『Food & Function』に掲載されました。

  • 題名: Cinnamaldehyde, a major bioactive component of cinnamon bark, enhances social approach behavior associated with a liver-brain FGF21-isotocin axis in zebrafish. (シンナムアルデヒドは肝臓のFGF21-脳内イソトシン軸を介して社会的接近行動を促進する)

  • 掲載誌: Food & Function

  • URL: https://doi.org/10.1039/D6FO00815A

  • 著者: 西 優貴子、河辺 ももこ、道原 成和、千葉 殖幹、二神 裕子、兵頭 駿希、乾 明夫、塩崎 一弘

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