研究の背景と目的
「オーラルフレイル」とは、口の機能が健康な状態から低下し始める段階を指します。歯の喪失や、食事・会話といった口腔機能の軽微な衰えが重なり、機能低下のリスクが増加する一方で、改善の可能性も残されています。オーラルフレイルは、食事の質や精神的健康への悪影響に加え、将来的な要介護・死亡リスクを高めることが報告されており、早期の予防対策が求められています。これまで、若年期から高齢期に至るまでのライフコースを通じた口腔状態とオーラルフレイルの関連を実証した研究は限られていました。本研究は、この関連性を検証することを目的として実施されました。
研究対象者と方法
本研究では、2021年に千葉県柏市在住の65歳以上の健康な高齢者から得られたデータのうち、1,596名を対象としました。オーラルフレイルの有無はOF-5を用いて評価され、若年期(15歳時)および中年期(40〜64歳)の主観的口腔状態は自己記入式質問票により評価されました。これらの関連性は、年齢、性別、BMI、教育年数、認知機能、服薬数を調整した二項ロジスティック回帰分析を用いて解析されました。
研究結果
対象者のうち、オーラルフレイルに該当する者は497名(31.1%)でした。オーラルフレイル該当者は、非該当者と比較して、若年期および中年期に口腔状態が悪かったと回答した割合が高い結果となりました。

特に、両時期ともに口腔状態が良かったグループを基準とした場合、若年期のみ口腔状態が悪かったグループ、中年期のみ口腔状態が悪かったグループの順にオーラルフレイル該当のオッズ比が上昇しました。そして、両時期ともに口腔状態が悪かったグループではオッズ比が4.55と最も高い値を示し、他のグループと比較してオーラルフレイルに該当する可能性が最も高いことが確認されました。

これらの結果は、若年期からの継続的な口腔健康管理が重要であることを示唆しています。
専門家からのコメント
東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢機構長は、今回の研究成果について「若年期・中年期という人生の早い段階における口腔状態の不調が、数十年後の高齢期のオーラルフレイルと関連していることを示した点で、非常に意義深い知見です。口腔の健康は高齢期だけの問題ではなく、まさに生涯を通じて育んでいくものであることが改めて示されました」と述べています。
大阪大学名誉教授の雫石聰先生は、本研究結果が「国民皆歯科健診」の意義につながるものとして注目に値するとコメントしています。「歯科健診を通じて若年期・中年期から口腔の問題を早期に発見・介入することができれば、将来的なオーラルフレイルや要介護状態のリスクを低減し、社会保障費の抑制にも貢献できる可能性があります」との見解を示しています。
サンスターグループ グローバル研究開発部の歯科衛生士である溝口奈菜氏は、「今回の研究は、将来のオーラルフレイル予防が高齢期からではなく、若年期・中年期の日々の口腔健康管理から始まる可能性を示しています。毎日の歯みがきや歯間清掃、定期的な歯科受診といった基本的なケアの積み重ねが、将来も自分の口で食べ、話し、笑うための基盤になると考えています」と述べています。
サンスターグループについて
サンスターグループは、オーラルケア、健康食品、化粧品などの消費者向け製品・サービスをグローバルに展開する企業グループです。「100年mouth 100年health」を掲げ、お口の健康を起点とした全身の健康と豊かな人生の実現を目指しています。

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