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HPVワクチンの安全性に関する「分子相同性仮説」を科学的に検証し否定

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HPVワクチンの安全性に関する「分子相同性仮説」を科学的に検証し否定

近畿大学医学部の松村謙臣主任教授(産科婦人科学教室)と角田郁生主任教授(微生物学教室)を中心とする研究グループは、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンが神経症状や自己免疫反応を引き起こす根拠として主張されてきた「分子相同性仮説」について、コンピューター解析を用いて検証を行いました。その結果、この仮説が科学的に支持されないことを明らかにしました。

「分子相同性仮説」とは、HPVワクチン抗原がヒトタンパク質と類似したアミノ酸配列を有するため、自己免疫反応が起こるというものです。本研究では、この仮説を主張してきた研究グループと同一の解析手法を用いて、免疫反応に関連するHPVワクチン抗原とヒトタンパク質を詳細に比較しました。その結果、神経症状や自己免疫反応を引き起こし得る分子相同性は存在しないことが明確に示されました。

本研究に関する論文は、2026年1月8日(木)に、日本癌治療学会が発行する国際的な学術誌”International Journal of Clinical Oncology”にオンライン掲載されました。

HPVワクチン

研究の背景と目的

子宮頸がんは、HPVの持続感染が主な原因であり、日本では毎年約1万人が新たに診断され、約3,000人が亡くなっています。HPVワクチンは、HPV感染および子宮頸がんの発症を高い確率で予防できることが多くの研究で示されており、世界保健機関(WHO)もその安全性と有効性を確認しています。しかし日本では、2013年以降、HPVワクチン接種後に神経症状や自己免疫反応が副反応として生じるのではないかという懸念が広がり、接種率が著しく低下しました。

こうした懸念の理論的根拠の一つとして、「分子相同性仮説」が提唱されてきました。この仮説は、HPVワクチン薬害訴訟などでも用いられてきましたが、抗体が認識しない領域を含めた解析や、エピトープの一部分のみの一致を根拠とするものが多く、妥当性の検証が十分ではありませんでした。

研究の内容と成果

研究グループは、先行研究と同一のコンピューター解析手法を用いて「分子相同性仮説」を検証しました。具体的には、HPVワクチンに含まれる抗原であるHPV16 L1タンパク質について、免疫応答に関与することが知られている22種類のエピトープを抽出し、それらのアミノ酸配列をヒトのタンパク質のエピトープと比較しました。

その結果、HPV16 L1のいずれのエピトープについても、ヒトタンパク質と全長にわたって一致するアミノ酸配列は認められず、自己免疫反応を引き起こす可能性がある分子相同性は存在しないことが明らかになりました。短い部分配列が偶然一致する例は認められましたが、これは他のウイルス抗原や無作為に生成した配列でも同様に観察され、免疫学的に意味のある配列の一致を示すものではないと結論付けられています。

本研究は、分子相同性を根拠としてHPVワクチンの安全性に懸念を示す主張が、科学的に支持されないことを示しており、ワクチンに関する正確な理解促進に貢献することが期待されます。

論文掲載情報

  • 掲載誌: International Journal of Clinical Oncology(インパクトファクター:2.8@2024)

  • 論文名: Lack of molecular mimicry between HPV vaccine L1 antigen and human proteins by a computational analysis
    (コンピュータ解析によるHPVワクチンL1抗原とヒトタンパク質との間の分子相同性の欠如)

  • 著者: 西岡和弘 1、関山健太郎 1、城玲央奈 1、角田郁生 2、松村謙臣 3

  • 所属: 1 近畿大学奈良病院産婦人科、2 近畿大学医学部微生物学教室、3 近畿大学医学部産科婦人科学教室

  • URL: https://link.springer.com/article/10.1007/s10147-026-02961-z

  • DOI: 10.1007/s10147-026-02961-z

研究者のコメント

近畿大学医学部産科婦人科学教室主任教授の松村謙臣氏は、「本研究では、HPVワクチンと神経症状を結び付ける根拠として引用されてきた分子相同性仮説について、同一の解析手法を用いて科学的に検証しました。その結果、自己免疫反応を引き起こし得る分子相同性は確認されず、この仮説は支持されないことが明らかになりました。本研究成果が、HPVワクチンに関する誤解の解消と、科学的根拠に基づいた正確な理解につながることを期待しています。」と述べています。

用語解説

  • 分子相同性(molecular mimicry): 病原体由来の抗原とヒトのタンパク質が分子レベルで似ている場合、病原体に対する免疫反応によって作られた抗体が自己の組織を誤って攻撃する現象(自己免疫反応)。

  • エピトープ: 抗体や免疫細胞が抗原を認識する際に結合する部位。自己免疫反応が起こるためには、病原体由来のエピトープとヒトのエピトープが免疫学的に意味のある形で一致している必要がある。

  • 交差反応性自己抗体: 本来は病原体に対して作られたが、構造の類似性などによりヒト自身のタンパク質にも反応してしまう抗体のこと。

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