1. 梅毒とは?
梅毒は トレポネーマ・パリダムという細菌が原因の性感染症で、性行為や口腔・肛門接触で感染します。感染後ほとんど症状が現れず、 約1ヶ月後に性器などに発疹や硬性症が出ることがありますが、しばしば自然に消失し、気づかないまま進行します。さらに進行すると、心臓、神経などに重篤な症状を引き起こすリスクもあります。東京都感染症情報センター
妊婦が感染した場合、胎児が母体から感染し、流産、早産、新生児死亡、先天梅毒などの重大なリスクがあるため、検査による早期発見が重要です。東京都感染症情報センターPubMed
東京都における梅毒流行の現状
急増する感染者
- 2022年は、東京都での梅毒患者数が 過去の倍近くの3,400人を記録しました。これは2016~2020年の年間平均約1,700人から急増した数字です。東京都感染症情報センター
- 2019年〜2022年の累計では、9,419件が報告され、 特に2021~2022年にかけての増加が顕著です。ResearchGate
- 年代別では、 20代女性の感染が3倍以上に急増しており、 妊婦の報告も増加していますが、先天梅毒の件数は増加していません。これは、妊婦健診での早期検出と治療が奏功していると見られます。PubMed
日本全国でのトレンドとの比較
PLOS ONEによる分析では、日本全国でも梅毒が急増傾向にあり、特に **2021年:+36% → 2022年:+66%**の急増です。PLOS
この増加率は、中国・オーストラリアと比較しても群を抜いて高く、強い注意が必要です。
長期的な推移(歴史的視点)
- 2008〜2019年の全国統計では、梅毒の早期・晩期症状例とも増加傾向が続いています。例えば、総届出数は 2008年:827件 → 2019年:7,007件と大幅に増加。感染症情報提供サイト
- 東京に限っても、2007~2016年で初期症例および続発例とも増加。特に、2015年以降、「MSW(異性愛の男性)」や「WSM(異性愛の女性)」での感染が急増し、 同性間だけでなく異性間の感染が主要因であることが浮き彫りになっています。ojs.wpro.who.int
東京都における梅毒の現状と今後の課題
- 急激な増加:東京都では2022年に感染者が過去最高水準に達し、若年女性と妊婦の感染が明確に増加。
- 全国的な傾向と重なる 検疫データとも一致し、日本全体でもパンデミック後の回復期で急増傾向が続いています。
- 早期発見による先天梅毒回避は成功しているものの、若年層での感染増加は今後の懸念要因。
- 対策のポイント:リスク層(若年層、性的多数接触者)への教育啓発、無料・匿名検査の普及、早期治療とフォローアップの強化が必要です。
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