深刻化する「支援の空白」への対応
2024年施行の「孤独・孤立対策推進法」では、24時間対応やアウトリーチ型支援の整備が掲げられていますが、既存の支援体制には構造的な課題が残っています。小規模自治体においても、顔見知りであるがゆえに相談しにくいという状況が存在し、「小さな町」であることが支援への障壁となることがあります。
三宅町では、自殺対策計画を地域福祉計画と一体で策定し、「生きることの包括的な支援」を地域施策の根幹に据えてきました。同計画では、「相談機関を知らない住民の割合が高い」ことや「相談先へのアクセスの難しさ」が課題として認識されており、支援につながれない住民へのアウトリーチが長年の課題とされてきました。また、京奈和自動車道の開通による通勤圏化に伴い、共働き世帯の増加と行政窓口の利用困難が重なっています。
こうした背景から、三宅町が求めたのは、既存の行政窓口とは異なる「既存窓口の手前にある居場所」でした。AIが24時間365日、まず住民の話を聴き、頭と心を整理した上で、必要に応じて人間の専門家へとつなぐ役割が、ZIAIの傾聴AIに期待されています。
実証実験の概要と特徴
実証実験の概要
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名称:三宅町 傾聴AIチャット相談窓口
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期間:2026年4月1日(水)〜
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対象:三宅町在住の方(年齢・国籍不問)
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領域:福祉(孤独・孤立、生活・家庭の悩みなど)/教育(いじめ・不登校・子どもの悩みなど)
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利用方法:スマートフォン・PCのブラウザから利用可能(24時間対応)
本実証実験の主な特徴は以下の3点です。
- 「まず聴く」設計: ZIAIの傾聴AIは、心理学の標準的な感情測定尺度による検証で、利用後のネガティブ感情を約22%低減することが実証されています。解決策の提示よりも共感と傾聴を優先し、相談者が自身のペースで言葉を吐き出せる環境を提供します。
- 福祉・教育を横断する一元的な相談口: 介護・ひきこもり・育児といった大人の悩みから、不登校・いじめ・子どもの心の問題まで、一つの入口から年齢や相談内容に応じてスムーズに振り分けます。これにより、属性別に縦割りになりがちな従来の窓口を補完し、複合的な悩みを抱える住民を取りこぼさない体制を目指します。
- AIを「入口」とする伴走支援モデル: 相談者が希望した場合、本人の同意のもとで三宅町の担当部署へ情報が連携され、行政や専門家による継続的な支援へとつながります。AIが「きっかけ」を作り、人が「解決」へ導く構造です。
今後の展望
三宅町は実証期間を通じて蓄積される相談データから住民の潜在ニーズや地域課題を可視化し、2027年度以降の本格導入を検討します。株式会社ZIAIは、自治体の規模や地域特性を問わず「誰もがいつでもどこでも悩みを相談できる社会」の実現に向け、この取り組みを全国に広げていく方針です。
株式会社ZIAIについて
株式会社ZIAIは、テクノロジーによる新たな「傾聴体験」の創造に取り組むヘルスケアスタートアップです。自殺対策を目的とした非営利のAI研究機関として設立された後、そこで培われた「傾聴AIアルゴリズム」を社会実装するために事業会社としてスピンアウトしました。
現代社会における個人の悩みの複雑化・多様化、メンタルヘルス懸念の増大、そして悩みを打ち明けられる居場所や聴いてもらえる存在の不足といった課題に対し、ZIAIは一次予防の重要性を訴えています。2030年までに、居住地、年齢、経済的状況に関わらず、誰もがいつでもどこでも悩みを相談でき、必要に応じて適切な情報、機関、専門家につながることができる社会の実現を目指しています。


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